タイの仏教 −朝の托鉢の時のタンブンのしかた−

朝の托鉢の時のタンブンのしかた

  さて、私たちがよく見かけることができ、私たちが手軽に行えるタンブンは、托鉢のタンブンです。托鉢に回る時刻や托鉢の時のスタイルについては、地方によって多少の違いがあります。たとえば、田舎の方だと時刻は朝七時とか、托鉢に回るとき比丘が鐘をたたきながら回るとか・・・。ここでは、チェンマイの町中でのタンブンを例に取って見てみましょう。

 早朝、五時から六時頃、比丘や沙弥は托鉢に回ります。七時には、すでに托鉢は終わって、お寺に戻っています。ですから、それ以前に、差し上げる物を用意します。タンブン用の蓮の花や小袋に分けてある食べ物などは市場で売っていますので、当日それらを市場で買い求めるのが、私たちには手頃です。準備する小袋の数量について、特に規定はありません。タイ人は縁起のよい数字として「九」を好みますので、九袋用意してもいいでしょう。

 托鉢の時、比丘や沙弥は一点を見つめるように脇目も触れず、一人であるいは数人で縦隊を組んで、早足で歩きます。比丘や沙弥が近くに来たら、合掌して、「ニモン・クラップ(女性の場合は「ニモン・カ」。「おいでください」「お招きします」の意味)」と、比丘を呼び止めます。比丘は立ち止まり、鉢のふたを開けますので、履き物を脱いで、用意した蓮の花や小袋に分けてある食べ物を差し上げます。蓮の花は開いた鉢のふたに載せ、食べ物は小袋のまま鉢の中に入れます。差し上げる袋の数についても規定はありません。たとえば九人での縦隊の場合、一人に一袋ずつ九人に差し上げても、一人に九袋全部差し上げても、また、九袋のうち五袋だけを差し上げてもかまいません。鉢に差し入れ終わったら、合掌してかがみます。すると、比丘は「・・・アーユ・ワンノー・スッカン・パラン(「寿命が延びますように、幸福が訪れますように」との意味)」と経文を唱えますので、その間、願い事を心の中で唱えながら、合掌してかがんでいます。経文を唱え終わると比丘は立ち去りますので、これで、托鉢のタンブンは終わります。

 比丘や沙弥は、どの曜日にはどこの家がタンブンをするかを知っていますから、托鉢に回るコースは必然的に決まっています。ですから、できれば、前日にタイ人にどこでタンブンができるか尋ねておいた方がよいでしょう。分からない場合は、市場周辺が場所としては確実です。お寺の境内でも托鉢のタンブンをすることはできますが、お寺によっては、檀家が食事を寺に運び、比丘や沙弥が托鉢に出ない場合もありますので、私たちが托鉢のタンブンする場所として境内を選ぶのはあまり確実ではありません。

  

ちょっと、嘘のような本当の話

 田舎の方では、畑でとれたスイカを布施でさし上げる人もいます。切ってあるならまだしも、丸いままのスイカをお坊様の鉢の中へ・・・、ズコン。スイカは鉢にすっぽりはまり込んでしましました。お坊様は、次の人が鉢にお布施を入れられるようにと、道の途中、人の見ていないところで、鉢を逆さまにしたり、振ったりして、鉢にはまったスイカを取り出そうとしましたが、どうしても、取り出すことができません。

 村の人たちは、托鉢で、お坊様が時間に遅れてくるのは気にしませんが、お坊様が来ないとなると、何か悪いことが起こると考えてしまいます。そこで、お坊様は、一度、寺に戻り、新しい鉢にかえて、再び出かけ、托鉢を続けました。

 スイカじゃなくて、ドリアンの場合もあるそうです。